somewhere sometime
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(いい陽気って感じだな)
学生最後の仕事も終え、春に新たな社会人となるまでの余暇。
それなりの大企業「孫呉」に就職することが決まっている凌統であるが、
特に休みの計画を立てているわけでもなく。
年に似合わないとよく言われる趣味の碁の本を買いに行ったり、
散歩したりとのんびりとすごすことにしていた。
まして今日はまだ一日目。
凌統は気ままに、近所の公園へと足を運んでいた。
近所の公園とは言っても、かなり広く。
端から端まで歩けば15分ほどはかかる、ちょっとした場所だった。
春の陽気に当たりながら、凌統はぶらぶらと歩いていた。
そのとき。
(何だ…あれ。)
ふと視界に入ったのは、柵の中に入って植木と樹木の陰から隠れるように何かを眺めている女子高生の後姿である。
なかなかに妖しげな光景ではあるが。
素通りするには気が引けた。
その女子高生が知り合いであることに気付いたからだ。
見覚えのあるヘアバンドで、すぐに分かった。
同じゼミだった孫兄弟の妹で、これから就職する会社の社長の娘。
そして個人的にも友人といってはばかりのない少女。
孫尚香だった。
凌統はこっそりと尚香の後ろに近寄る。
だが、尚香は後ろの気配に気付くことはなかった。
勘の良い尚香が、と凌統は少々驚いていた。
(何熱心に見てんのかね。
全く気付かないとは。)
尚香の熱視線の的を拝見しようかと前を見たが、特にそれらしきものは見当たらないようだった。
(?何もないじゃん。)
とりあえず気を取り直して。
凌統は友人に声をかけることにした。
「姫、何やってんの?」
「きゃああっ!!??」
尚香は大音量と共に、視線を向けていた街路の上に転がっていった。
凌統の予想以上の反応を返してくれたのである。
ちなみに姫、というのはゼミ内での尚香の渾名である。
「りょ、凌統??!!脅かさないでよ!!」
「あ〜ごめんごめん。そんなにびっくりさせるとは思わなくってさ。」
笑いを堪えながら答える凌統に、尚香はむくれつつも。
突然あたりを見回し始めた。
「…今日は無理かなあ…。」
尚香は心底がっかりしたような表情をする。
そんな顔を見たのは初めてだった。
「?何か待ってたの?」
転がった女の子を放置しておくのもなんなので。
凌統も柵を越えてしゃがみこむ尚香の傍に行き、手を差し出した。
その手を特に躊躇うでもなく取ると、尚香は立ち上がった。
そして気付いたように言った。
「あ!凌統、脅かしたのは許してあげるから、
私をここで見たこと、兄さまや父さまには言わないでね。」
尚香の言葉は凌統には意外だった。
「え?何か悪いことでもして…。」
「違うわよ!ただ…。」
その時、尚香ははっとした顔をして、顔を横に向けた。
「…あ…。」
その顔が嬉しそうにほころぶのを見て。
凌統も自然にそちらに視線を向けた。
「……っ…。」
視界に入ったのは、スーツ姿の男性。
特に珍しくもない一人の社会人。
そのはずなのに。
凌統は男性から目を離せなかった。
胸の傷が疼いたように感じた。
To be Continued…
というわけで一気にほのぼのしてますが…シリアスにしてくつもりです。
でもダークにはならないかも;
今回は余計な絵が入っててすみません。
なんか描きたくなっちゃって。
やっぱ凌統大好きです!
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